今年の音楽 2021

晦日です。自分が今年気に入った音楽の話をします。

去年までアルバム・オブ・ザ・イヤーと題してやっていましたが、やめたくなったのでやめました。 ベストを1作選出するのもやめました。 自分が今年気に入った音楽の話であって自分が気に入った今年リリースの音楽の話とは限らないところは今まで通りです。

気に入った音楽とはどういうものか、その(もうちょっと具体的な)定義について考えた結果、自分がもう一度聴きたいと思うような音楽をまとめることにしました。 完成度が高いと思ったような作品であっても、もう一度聴きたいかと言われるとそこまででもないなというようなものは除いています。 このあたりは記事を読む人からするとどうでもいいと思いますが、選ぶ側としては結構楽になりました。この基準は Bandcamp の Wishlist をキレイにするのにも役に立ちました(まだ500件以上積まれていますが)。 あと、1曲だけいいけどあとは……みたいな作品もいくつかありましたが除きました。

今年も在宅勤務でした。 そのための運動不足解消というわけでもないのですが散歩に出ることが多く(一時期は一日の歩数目標も設けていました)、歩きながらいろいろ音楽を聴いていました。 去年ちょっといいスピーカーを買ったりしたんですが、基本的に自宅のデスクで集中して音楽を聴くことができない(聴きながら何かしたくなってしまう)ので、主に歩きながら聴いています。どうせ聴きながら何かするなら聴きながら歩くのが一番音楽に集中できて良い気がします。

歩きながら Bandcamp Daily 消化を結構頑張ったので今年は2021年リリースの作品がかなり多くになっていると思います。 これはこれでもっと過去作を掘るべきだろという気になります。

毎年思うことですが、こうやってまとめてみると自分の音楽の好みがはっきり見えてきて面白いですね。 でも、この記事を書くために挙げた音楽を何度も何度も繰り返し聴いていたらだいぶ食傷気味になりました。 なんか全然違う方向性の音楽を聴きたいです(あなたの今年気に入った音楽を教えてください)。

ジャケットを見て気になった音楽を聴いてもらえればと思います。 Bandcamp にあるものは Bandcamp の埋め込みでジャケ画を出しています。ないものは仕方ないので Spotify を埋め込んでいます。 Songwhip へのリンクもあるやつは用意してあるので、Spotify とか Apple Music などで聴きたい方はこちらからどうぞ。 Songwhip が良い感じでジャケ画出してくれるといいんですけどね~。あと Bandcamp 対応ももっと手厚くなってほしい。

20 Minute Loop - Yawn​+​House​=​Explosion (2005)

Bandcamp のバンドのプロフィールに

Original music for the hook-hungry mob, the nervous foot, the jaded indie-phile.

とありました。わたしが hook-hungry mob です。

キャッチーさやコーラスワークから Dogs Die in Hot Cars のことを思い出しました。思い出しましたとは言っても、自分が 20 Minute Loop のことを知るのが遅かっただけでどちらも同時期の作品なんですが。

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Archspire - Bleed the Future (2021)

M-1 決勝で松本人志が「最後の最後は一番バカに入れようと思った」と言っていましたが、やっぱりバカは強いですね。

前作の方が知性があったと思います。今作の方がバカです。

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Arlo Parks - Collapsed in Sunbeams (2021)

痛みに寄り添う歌詞とサウンド。声がいいです。

おげんさんといっしょで松重豊がこのアルバムを推していてウケました。

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Between the Buried and Me - Colors II (2021)

名盤 II は残念な結果になることが多い(Operation: Mindcrime とか……)と勝手に思っているので、リリースを楽しみにしつつもだいぶ時間をおいて周囲の安全を確認してから聴きました。大丈夫なやつでした。

Colors の頃にはあったのに最近薄れていた展開の激しさが帰ってきた気がします。 どうしても Colors が比較対象に上がるんですが決して Colors の劣化コピーではなく、ちゃんと2021年の BTBAM が Colors みたいにめちゃくちゃしたらこうなりましたという感じになっています。

自分は結局 Colors の方が耳に残るキラーフレーズがあって好きかなと思いつつも、II は II で下手すると Colors 以上のめちゃくちゃ度なので好きです。

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Bicep - Isles (2021)

内向的で賢そうなハウス。 自分が好きになるハウスは大体内向的で賢そうなのでハウス自体がそういうジャンルなのかどうなのかよくわかりません。

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Bisbâyé - Le Sens De La Fin / The Sense Of An Ending (2021)

Bandcamp のアルバム紹介に

The band’s leader cites Don Caballero and Meshuggah as influences. King Crimson’s influence is also undeniable, so is the sophistication of the math-rock genre’s best acts, while you can find some of Larouche’s favorite composers (Steve Reich, Gyorgy Ligeti) in there as well.

とあるのですが、この通りです。

2人のギターと2人のドラムがそれぞれ呼応しあうあたりはかなり King Crimson っぽいですし、その他全体的に Meshuggah の影響を強く感じます。ゴリゴリ。

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Black Country, New Road - For the First Time (2021)

耳に残るのに頭に入ってこない1枚。

ジャケ画が Ryan McGinley っぽいなと一瞬思いました(Ryan McGinley ではない)。

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Black Midi - Cavalcade (2021)

上の Black Country, New Road もこの Black Midi もどちらもサウスロンドンを拠点にしているらしいです。どちらも難しい。

めちゃくちゃ性格を悪くした King Crimson といった感じ。

Zazen Boys が好きな人にはきっと1曲目 John L のブレークで向井秀徳が変な掛け声を入れているのが聴こえてくることでしょう。

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Breezin - BRZN (2016)

どう聴いても捻くれているのにストレートな曲。

この bandcamp のジャケ画はどうにかならなかったんですかねえ。

Crumb - Ice Melt (2021)

Crumb については、Locket という EP が良くて2017年の記事に載せたりもしました。 Locket がローファイみがあってドリーミーなやさしいサイケだったのに対して、今作はだいぶダークな感じで結構力強いです。ジャケットも黒いし。

Locket が本当に寝る前だとしたら今作は夜は夜でもまだ眠くない夜。

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Cynic - Ascension Codes (2021)

2015年、来日公演の直後に実質解散したときには「また15年後に再結成するんじゃない?」とか言っていましたが、それは完全に叶わぬ夢となってしまいました。 一度でも生で見れてよかった。

中心人物の Paul Masvidal が残っているので前作までの色も結構残されてはいますが、基本的には別プロジェクトとして考えた方がいいのかなと思います。別のバンドになってしまった!というほどではありませんが、インタビューを読むと Paul Masvidal 自身ベースをシンセに担当させるなどして意識的に変化を図ってきているようですし。

音楽としても耳に残るリフやフレーズが無くなり(自分の耳に残らないだけ?)、どちらかというと構成で聴かせる方向にシフトした気がします。

アルバムとしては暗く始まって終盤にかけて明るくなっていくような印象を受けます。喪失からの回復ですかね。自分は終盤の明るいパートが好きです。

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Cryptic Shift - Visitations From Enceladus (2020)

音源自体は去年買ったと思うんですが去年の時点ではそこまでピンと来ておらず、今年になってドハマりしました。

テクニカル/プログレ系デス/スラッシュの歴史をまとめたようなアルバム。

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Damu the Fudgemunk - Conversation Peace (2021)

ライブラリ音源をサンプリングして新しい音楽を作りそれをまたライブラリに収めるという KPM の企画の1作目らしいです。

単純にかっこいい。

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Deafheaven - Infinite Granite (2021)

ブラックメタル要素がほぼ無くなって脱ポストブラック・ブラックゲイズしたと騒がれていますが別にそんなこともなくて、前作でも見られた焦らして焦らしてカタルシス路線が極端になっただけかなと思ってます(まあものは捉えようですが)。

じっくりと浮かせた老廃物を最後の3分で洗い流します。 聴き始めたら最後まで聴きたいアルバム。

自分は前作の方が好きですが、こっちはこっちでぼんやり聴けて良いなと思います。

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Dry Cleaning - New Long Leg (2021)

Black Country, New Road と Black Midi に加えてこのバンドもサウスロンドンらしいです。ほんまに?

いわゆる Spoken word 的なボーカルの裏でギターが暴れてバンド全体が熱を帯びていくのが良いです。 ギターには変なステップを踏んでいてほしい。

ギターの立ち位置的になんか布袋寅泰とかいまみちともたかとかを連想しました。

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Faceless Burial - Speciation (2020)

音源自体は去年買ったと思うんですが去年の時点ではそこまでピンと来ておらず、今年になってドハマりしました。おそらく今年一番多く再生したアルバムです。

とにかくねちっこいリフと、繰り返すところは繰り返して切り替えるところは切り替える展開の妙がたまりません。

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Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra - Promises (2021)

基本的に同じフレーズが繰り返されるだけ(失礼)なので、味を探すにはかなり集中することを要求されます。 でもそこで聴くのをやめさせるのではなく集中しなきゃいけない気にさせてくれる作品です。

作業用 BGM には向きません。

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Hiatus Kaiyote - Mood Valiant (2021)

今作は Brainfeeder からリリースとのこと。ピッタリですね。 その情報が頭に入っているからかもしれませんが、ビート感や展開から Flying Lotus の影響が感じられます。

ネオトーキョーみたいなノリで Hiatus Kaiyote のことをネオソウルと呼びたい。

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Kid Fresino – 20, Stop It. (2021)

流暢に英語と日本語を行き来するラップの耳触りが良いです。 客演もバリエーション豊かですしそれをまとめ上げるトラックも良いです。

Kendrick Lamar の To Pimp a Butterfly とかもそうだったんですが、自分はこういうトラックが面白いヒップホップが好きみたいですね。

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King Crimson - Music is Our Friend (Live in Washington and Albany, 2021) (2021)

今年夏の米国公演の音源がもう出ました。 日本公演の前に間に合わせたのは集金の意図もあるのでしょうか。

正直、この音源は諸手を挙げて歓迎というわけではありません。 以前と比べて敢えてまとまりを崩すようなアレンジが増えた上に、モタったりヨれたりしてない?と思うポイントもいくつかあり、単純に音だけで聴くとちょっとぐちゃってる感じがします。 映像付きだったり生だったりしたら楽しめるのかなと(日本公演、初日は微妙でしたが最終日は素晴らしい completion でした)。

でも、3周くらい聴いていたら良くなってきました。

演奏のうまさやまとまり的には2018年にリリースされた Meltdown (Live in Mexico) の方がいいと思います。 日本公演の音源が映像付きで出ると信じているのでそれまでこれか Meltdown を聴いて待ちます。

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Mortuary Spawn - Spawned from the Mortuary (2021)

ライブで観たらめちゃくちゃ楽しそうな驀進感のあるデスメタルモッシュピットとかいつ復活できるんですかね。

ラウパに来てほしい。ラウパは終わりましたが。

Portico Quartet - Terrain (2021)

ほぼミニマル。ギリギリ現代ジャズ。

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Sacoyans - Yomosue (2020)

だるそうなシューゲイザーオルタナ・ドリームポップ。 構成が面白い曲が多いです。音楽の天才。

The Smashing Pumpkins の影響が強いらしいんですが自分まだスマパンを履修していないんですよね。履修しないと。

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Sam Gendel & Sam Wilkes - Music for Saxofone and Bass Guitar More Songs (2021)

ヒップホップ系のビートとやさしいベース・サックスの組み合わせ。

雰囲気としては去年のお気に入りの Jeff Parker - Suite for Max Brown を思い出しますが、こちらの方が全編を通してやさしくてメロウだと思います。

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Teruki Chan - Seven Compositions from Sheung Shui (2021)

ネタかガチかかなり際どいジャケ画。

明るく楽しい変拍子。 録音の自家感と演奏のギリギリ感も楽しさを手伝っています。 音楽っていいものだなとあたたかい気持ちにさせてくれました。

Bandcamp のクレジット欄が面白いです。

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The ティバ - The Planet Tiva part.2 (2021)

メンバー的には2ピースらしいですが音源には普通にベースが入っているような。だるそうだけどキレてて、インディー感が良いです。

part.1 と part.2 は連続リリースされているのでまとめても良かったんですが、それなりに雰囲気が違うので part.2 だけにしました。

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The Zenith Passage - Algorithmic Salvation (2021)

アルバムでも EP でもなく single track なんですが入れておきます。次作とかに収録されるんですかね。

粒として届くリフ、光ですか?

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Wreche - All My Dreams Came True (2021)

ギターのトレモロリフではなくピアノのアルペジオで攻めてくるポストブラック。そのおかげでクラシカルさも感じます。

神経質さと不協和音でひたすら不安を煽ってきます。

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折坂悠太 - 心理 (2021)

平成」が話題になった時にスルーした自分を恥じました。

表現したいという熱量を感じさせる一枚。とにかくやりたかったんだろうなと。

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カネコアヤノ - 祝祭 (2018)

自分の生活にも何か楽しいことがあるんじゃないかと思わせてくれるアルバム。

たまに80年代アイドルが顔を出す気がします。

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きのこ帝国 - Eureka (2013)

このアルバムの前後作は聴いていたのになぜかこれは聴いていなかった 1st。 聴くべきはこれでした。コンビニで缶ビール買ってる場合じゃない。

若さと気迫がこもっています。

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食品まつり a.k.a foodman - Yasuragi Land (2021)

Bandcamp のアルバム紹介で hyper-rhythmic music という言葉が使われているのですが、そういうことです。 これが安らぎです。

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